【発案者(元介護スタッフ)の想い】
現在、在宅介護をしている母が脳疾患で救急搬送されたのは8年前の2月の寒い日でした。
幸い発見が早く一命をとりとめましたがやはり、後遺症として半身麻痺、失語症、嚥下障害があり、リハビリをしながらADLを取り戻す訓練を始めました。76歳という年齢は、まだ日本の女性としては、寿命を全うしたと言える平均年齢には早いと感じ、リハビリ病院での回復を期待しましたが思うようには回復が見込めず、医師から点滴での栄養を止め胃瘻を造設する提案を受けました。
経管で直接栄養を胃に取り込みながら、嚥下(飲み込み)の訓練もすれば栄養が行き届き体力も出てくるので半身麻痺で動けなくても、動く方の手で口に食べ物を運ぶことで食べる喜びを感じ、食欲も出るし食べたい気持ちがリハビリにも繋がるのでは無いかと思いました。しかし、高次機能障害という脳のダメージもあり、自ら食べるという機能回復にまでは至らず日ごと寝たきりになって、身の回りの事は全て他人の手を借りなければ寝返りすら打てないようになって行きました。病院と隣接する老人保健介護施設に入所し、半年、1年と時は経って行き実家で独り暮らしになった父も、母の介助に足しげく通い、生きているのだから、たとえ一口でも口から何か食べさせてあげたいと懇願しペースト食を提供してもらい介護士さんの指導を仰ぎながら毎日1回だけの食事の時間には介助に行っていました。母は特に病気をすることもなく、施設でお世話になりながら比較的安定して過ごしていました。しかし、施設での生活が3年を過ぎたころ、父にすい臓がんが見つかり余命を告げられると、あっけなく天に召されてしまいました。母のことに気を取られ、父の体調の異変に気が付いてあげられなかったことを娘として今でも深く後悔しています。父は、自分が母を看取る事が出来ないことを無念に思っていたようで「母のことを頼む。」と、私に言い残して旅立ちました。私は父の思いを受け取り、母を看るため、仕事を辞め自宅での在宅介護を決意しました。
【熱こもらーず開発のきっかけ】
居宅の担当ケアマネージャーさんと相談しながら母を家で介護するため訪問医、訪問看護、入浴のためデイサービス、嚥下指導の言語聴覚士の訪問、リハビリを兼ねた作業療法士の訪問、介護用福祉用具提供会社、たくさんの契約書類にサインし準備が整い、いざ在宅での介護を始めてみると、こんなにたくさんの関係者に支えられながら在宅介護は行われていることを痛感し日本の介護保険制度はすごいなと感心するも、やはり家族は24時間責任を待たなければならず、慣れるまで気か抜けない日々でした。
母の場合、特に体温調整が難しく、年間通して空調の整った病院や施設では皮膚疾患は無かったようでしたが、家のエアコンでは寒すぎたり暑かったりと常にエアコン調整が必要でした。寝たきりで特に胃瘻で経管栄養の患者は汗をかきやすいようで、すぐに体温が上昇する。それなのに、寝たきりで自分で動けないため、床ずれが出来ないように2時間置きに体の向きを変えてその体位を保持するためのクッションを身体に密着させて維持しなければなりません。また、拘縮がある母は胸郭を広げて呼吸しやすくするために、脇を少し広げた姿勢を保持します。この体位保持に使ういくつものクッションが、体の熱ため込んでしまうため負の連鎖であり背中や首元、脇の下がびっしょり濡れるので、一日に何回も着替えが必要です。また、シーツも濡れるので取り換えが面倒になってタオルを間に挟むなどしても、余計に暑くまた汗をかく。そうしているとあせもが出来たり蒸れて湿疹ができたり紙おむつで蒸れてかぶれたりと皮膚疾患との戦いで皮膚科の訪問医に来てもらったり、薬を何種類も処方してもらうことが常でした。また、在宅介護を始めたころは、コロナ渦真只中で誰もが発熱に敏感で、「37.5度」以上の熱があると、PCR検査が必要だったり、デイサービスには行けなかったりと病気の熱ではない「こもり熱」で自宅待機を余儀なくされることがありました。このクッションによるこもり熱を何とか出来ないものかと訪問医にも相談しましたが、「通気が良いとは書いてあるけれど、なかなか通気の良いクッションは無いわね。寝たきりの患者さんのこもり熱は共通の悩みなのに…」と、言う医師の声を聞き、母だけが「こもり熱」に悩まされているわけではない他の寝たきりの患者さんも同じ悩みを持っているということを知り、それなら通気に特化した熱がこもらないものを自分で作ろうと思いました。これが「熱こもらーず」の発案のきっかけです。
【熱こもらーずが出来るまで】
1、元祖ネット式通気クッション
肌と肌が密着する事で身体の熱がこもるので 通気を良くして、熱を解放するには穴の開いた筒状のクッションがあれば良いと思い100円ショップで 見つけたのが園芸用のPP(20㎝×30㎝)の板状ネット2枚組でした。これを丸めると丁度脇の下にフィットして肌触りも悪くなく、弾力性もあり、適度につぶれることで無理な圧迫感もなく、ネットなので通気性に優れ身体の熱も開放されました。円形に丸めたネットの両端が当たると怪我につながるといけないので安全に使用できるように、伸縮性のゴムが編み込まれたタオル生地のヘアバンドが厚みや手触りが良くこれでネットの両端を保護する
(写真1)ネットクッション と素晴らしいネットクッションが出来上がりました。(写真1)これが第一号です。
クッションは好評でこもり熱に悩まされている病気や老齢で寝たきりの患者さんに是非使え
るように販売して欲しいという声が徐々に介護に携わる関係者から多く聞かれるようになり
ました。しかし、長く使ううちにPPネットが破損してしまうという欠点が見つかり、これで
は安心して使うことはできません。何とか割れないネットは無いものだろうか…。
しかし、個人の一主婦が開発するにはここまでが限度を感じていました。
【発明学会ミニコンクールと東京ビッグサイト産業交流展】
ネットが割れない素材が欲しい、割れないネットを製造して欲しいと思っていたところ、夫が発明学会の会員でしたので発明学会に商品化の相談に行くと「発明コンクール」に出展すると、たくさんの企業が見に来てくれるので協力してくれる会社が見つかる可能性があると、勧めてくれました。発明学会のコンクールでは奨励賞を頂き、さらに大規模な東京ビックサイトで行われる「産業交流展」にも出展をさせてもうことが出来ました。そこで出会ったコンサルティング会社の社長さんに「熱・こもらーず」誕生の経緯やネット素材を開発して世の中に役立つ製品として完成させたいことなどを話すと、後日マッチング出来そうな会社があるので会ってみませんかとお話を頂きました。そしてそれがご縁で、今の㈱ケアリンクの我妻さんをご紹介いただきました。その時、我妻さんは介護見守りシステムの開発をされており介護施設との関りも多く、介護用品にも関心を持っておられましたので共感して頂ける部分が多く、とても積極的に協力頂けました。
割れないネット、弾力があり手触りも優しいネット、介護に相応しい安全なネットを探して下さり、また関係会社に声を掛けて頂き、たくさんの資料や素材の提供をして頂きました。私も母の介護の合間にホームセンターや手芸用品、文具、キッチン用品、浅草橋、ハンズ…あらゆる素材を確かめ、介護に相応しい安心安全な通気の良い介護クッション「熱・こもらーず」完成に向け精力を尽くし、やっとここまで納得できる製品にすることが出来ました。
数々の試作品の一部、しかし全部却下品です。
【製品完成まで】
試作品を作っては在宅介護に訪問してくださる医療関係者の皆さんに毎回意見を聞き試行錯誤しながら何度も何度も改良し、安全性、反発力、弾力性、手触りなどを母で確かめ、一喜一憂する私を、「一日も早く完成出来る日を楽しみにしています」と励まして頂きやっと、ここ
まで来ましたので今回の商品完成をとても喜んでくれました。
こうして寝たきりで動けなくても、話せなくても母が生きて居てくれたから出来た「熱・こもらーず」介護クションです。こもり熱に悩まされている患者さんが快適に過ごせるように、役立つ製品として、こもり熱等でお悩みの方にお使いいただければ幸いです。
◆90%以上が空気層の素材だから通気性抜群です。
◆熱が高い時は保冷剤が入れてお使いいただけます。
◆カバーはメッシュの生地で肌触りが良く簡単に洗えるので清潔に保てます。
◆本体が硬く感じたら柔らかさを調整することができます。
株式会社介護用品愛ショップ
岡田俊幸
